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野原みさえの病気。 [感動]

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野原家
ローンが35年残ったいつもの一軒家
いつものように幼稚園バスが前に止まる
「かあちゃんおかえり~!!」

しんのすけがいつもの挨拶で帰ってくる

「帰って来たらただいまでしょ!」
いつものみさえのお叱り
「かあちゃんおつや~」
「帰ったらまず手を洗ってうがい!」

「昨日やったもん!」

「おバカ!早くしなさい!」

「んも~、我が儘なんだからぁ~」

「ママはお洗濯干してくるからその間にうがいと手洗いしなさいよ!」

「ホイホ~イ」

みさえが庭へ出ていく

「妖怪ケツデカオババはうるさいぞ…」

ぼそっと呟くしんのすけ

「しんちゃ~ん…ちゃんと聞こえてるわよ~…?」

みさえの鋭い眼光がしんのすけに突き刺さる

「て、手洗ってこよ~…」

そそくさと浴室に向かうしんのすけ

手を洗いリビングに戻るしんのすけ

「しんのすけ~うがいはしたの?」

庭からみさえが言う

「これからだゾ~」

冷蔵庫を開けてプスライトを取り出すしんのすけ
それをコップに注ぎうがい

「ガラガラガラー」

ゴクン

「ぷは~、美味しいうがいだったぁ~」

「よし、も一回」

ゴチンッ

「このおバカ!ジュースでうがいなんかしたら駄目でしょ!」

「へぇぇ~」

「罰としておやつ抜き!」

ドスドスと庭に戻るみさえ

「まったくぅ、かあちゃんは怒りっぽいゾ」
うがいを済ませテレビの前に座りビデオを入れるしんのすけ

「アクション仮面はやっぱり良いですなぁ~」

上機嫌でビデオを見るしんのすけ

「たぃ!」

後ろからひまわりが近づいてくる

「お~ひまわり~、一緒にアクション仮面見るか?」

「る~!」

「よしよし、オラが特等席で見せてやるゾ」

ひまわりを抱き上げ自分の足の上に座らせる

「たぁ~!うへへぇ」

うれしそうなひまわり
暫く見入る二人

『正義は勝つ!ワッハッハッハッ!』

お決まりの台詞

「ワッハッハッハッ!」

「わったったったー」
それを真似るしんのすけ
その姿を見て真似るひまわり

「しんのすけ~、おやつよ~」

台所から声が聞こえる

「おおっ?かあちゃんさっきおつや抜きって…」
「ふふっ、良いお兄ちゃんだったからご褒美よ」
「ママって美人////」
みさえに抱き着くしんのすけ

「ふふっおバカ、早く食べなさい」

プリンをテーブルに置くみさえ

「おお~プリンだ!」

大喜びのしんのすけ
一口食べる
「いやぁ~ん、まったりとしてプルプルでしつこくないお味////」

「大袈裟ねぇ~」

微笑みながら言うみさえ

「たいも!たいも!」

ひまわりも食べたいらしい

「あらひまも?はい、あ~ん」

食べるひまわり

「たぁい!うへぇ」

ご機嫌なひまわり

そしてひろしが帰ってくる時間

「ただいま~」

「あなたぁ~ん」

しんのすけが駆け寄る

「おかえり、だろ?」

笑いながらしんのすけを抱き上げるひろし

「しんのすけ~重くなったなぁ」

「そうなのよ~、この前体重計のったら3キロもふえちゃってぇ」

「こらしんのすけ!それはママの事でしょ!」

台所からみさえが顔を出す

「また…増えたのか」

ひろしが問い掛ける

「増えてないわよ!最近減ってるのよ!しんのすけが言ったのは前の事よ!」

「ならいいけど…」

寝室に向かい服を脱ぐひろし

「あなたぁ~、しんのすけとひまお風呂にいれて~」

「えぇ~、お前がいれろよ~」
「オラもとうちゃんとなんてやだゾ~、南明奈ちゃんがいい~」
「たい!やっ!うへぇ(私もいや!小栗旬ならいい~)」

ダンッ!

みさえが捌いていた魚の頭がリビングまで転がってくる

「さぁっしんのすけ、ひまパパとお風呂だぁ!」
「わぁいわぁいパパとお風呂だぁ」
「たぁいたぁい!」

そそくさと風呂場へ向かう三人

「まったくもう…」

料理の支度をするみさえ

「うぇ~い」

三人は仲良く入浴
頭を洗い身体を洗う

「よしそろそろでるぞ~」

浴室からでる三人

「あれ?バスタオルが無い…」

「みさえ~お~い、みさえ~」

呼び掛けるが返事が無い

「なにやってんだみさえの奴…しんのすけ、ママ呼んで来てくれ」

「ほっほ~い」


台所に駆け出すしんのすけ

「まったく…風邪ひいちゃいまちゅね~ひまちゃ~ん」
「ね~」

ひろしとひまが待っていると台所から

「とうちゃん!かあちゃんが!」

しんのすけの声が

「どうした?床でも抜けた…か…」

ひろしが台所へ行くとみさえが倒れている

「みさえ!」

ひまわりをしんのすけに渡すひろし
そしてみさえに駆け寄る

「しんのすけ!救急車だ!」
「ほ、ほい!」

「みさえ!みさえ!」

必死に呼び掛けるひろし
そしてしんのすけが戻ってくる

「とうちゃん!」
「しんのすけ!」
「今20時32分だって!」
「バカ!そりゃ時報だよ!あぁもう!車のが早い!」

服を着替え急いでみさえを担ぎ車に乗るひろしとしんのすけとひまわり
そして病院につき急いで窓口へ

「すいません!みさえが!妻が!倒れて!」
「はい、じゃあまずあちらで書類に記入を…」

淡々と別の窓口を指差す事務員

「バッカヤロー!みさえが大変なんだよ!死んだらどうすんだ!早く医者を呼べよ!」

むなぐらを掴み叫ぶひろし

「は、はい、少々お待ちを」

気圧され医者に連絡をとる事務員

「で、ではこちらへ」

事務員の案内で医者の元へ向かう野原一家

手術室の前でひろしはうなだれている
医者はみさえを軽く調べると顔色を変えすぐに手術室の空きを確認しひろし達には説明しないまま手術室に入った

「みさえ…無事で居てくれ…」
「とうちゃん…だいじょぶだゾ!かあちゃんは強いもん!」
「しんのすけ…そうだな」

しんのすけの頭を撫でるひろし
みさえが手術室に入って1時間ほど経とうとしたその時
手術中の明かりが消え、医者が中から出て来る

「先生!みさえは…みさえは!」

医者に詰め寄るひろし

「先生…かあちゃんは…?」

うるうるしながら問い掛けるしんのすけ

「お父さん…こちらへ」

医者は近くの診察室にひろしを誘う

「とうちゃん…」
「お子さんはうちの看護師に預からせます…」

看護師に手を引かれ離れるしんのすけ
そしてひろしは診察室へと入る

「旦那さん…落ち着いて聞いて下さい…奥様は…胃癌です、それも…かなり進行もしています、普通なら激痛で日常生活もままならない筈なのに…」
「は…?が、癌…先生…嘘でしょう?」
「旦那さん…事実です…奥様は癌…」

医者が言い終わる前に医者につかみ掛かるひろし

「ふざけんな!昨日まで…いやついさっきまで元気だったんだみさえは…さっきまで…元気だったんですよ先生…なのに…なんで癌なんですか!みさえが何したって言うんだよ!」
「奥様は貴方に心配をかけまいと気丈に振る舞っていたんだ!旦那さん!今の奥様に一番必要なのは貴方の支えですよ!」

その言葉を聞き手を離し崩れ落ちるひろし


「旦那さん、私たちも全力を尽くします…」
「はい…お願いしますみさえを…助けて下さい…」

涙声で言うひろし

「お子さんには言わないほうが…」

「いえ…息子には…しんのすけには伝えます…」
「しかし…」
「あいつは…男です…みさえを守ってやるのはあいつと俺の仕事なんです…しんのすけならわかると思います…必ず…」

ゆっくり立ち上がり診察室を出てしんのすけのいるナースステーションへ向かうひろし

「とうちゃん!」

ひろしの姿をみるやいなや駆け寄るしんのすけ

「しんのすけ…とうちゃん話しがある、男同士の大切な話だ」

「ほ、ほい…」

しんのすけの目線に合わせてしゃがむひろし

「しんのすけ…いいか…よーくとうちゃんの言うことを聞くんだ…かあちゃんは…みさえは…とっても重い病気なんだ…もしかするとかあちゃんは…」

「かあちゃんしんじゃうの?」

「…」

しんのすけの問いかけに黙ってしまうひろし

「うそだ…とうちゃんオラを騙そうとしてるんでしょそうでしょ?」

「しんのすけ…本当なんだ…これからは」

「かあちゃんの病気なんかやっつけてよ!とうちゃん強いんでしょ!大人でしょ!」
「とうちゃんにも病気は倒せないんだ…」
「父ちゃんのおバカ!父ちゃんの弱虫!かあちゃんが死んだらとうちゃんのせいだぞ!」

「!…しんのすけ!」

パシンッ
しんのすけの一言にカッとなりしんのすけを叩くひろし

「あっ、しんのすけ…すまん」
「とうちゃんのおバカ!」
「しんのすけ!」

しんのすけはそのまま何処かへ走り去ってしまう

「(かあちゃんは死なないゾ…かあちゃんは絶対絶対)」

手術室に走るしんのすけ
その時

「…」

みさえが手術室から病室に移動するために運ばれている

「かあちゃん…」

その場に立ち尽くすしんのすけ

「…」

「しんのすけーっ!しんのすけーっ!」

しんのすけを探し回るひろし

「やっぱり…あいつにはまだ早かったんだ…俺は馬鹿だ…大馬鹿だ…」

「んも~とうちゃんうるさいゾ、病院はしずかにしなきゃ~」

しんのすけがトイレから出て来る

「しんのすけ…!」

駆け寄り抱きしめるひろし

「しんのすけ…すまん!とうちゃんが悪かった!」
「んーん…とうちゃん」
「なんだ?」

離ししんのすけの目を見るひろし

「オラ…かあちゃんを病気からお守りするぞ…!」
「しんのすけ…」
「オラ男だもん…かあちゃんは女だから男が守らなくちゃいけないんだゾ!ね?とうちゃん!」
「ああそうだ…!かあちゃんを守るのは俺達だ…」
「あとひまわりもだゾ!」
「そうだな…そうだな…」

しんのすけをきつく抱きしめるひろし

「とうちゃん苦しいゾ…」

しんのすけも堪え切れなかった涙を流す

翌朝
しんのすけとひろしとひまわりはみさえの病室でうたた寝していた

「ちょっとあなた!しんのすけ!」

跳び起きる三人

「なんでこんな所にいるの!?会社は?幼稚園は?」
「み、みさえ…」
「かあちゃん…」

みさえに抱き着く二人

「ちょちょっと!」
「みさえ!愛してるぞ!」
「かあちゃん愛してるゾ!」
「たいやい!」

しんのすけ、ひまわり、ひろしが抱き着き

「なにおバカな事言ってるの!」
「しんのすけ、父ちゃんはかあちゃんと話があるから…な?」
「ほ、ほい、ひま行くぞ」

ひまわりを抱っこして病室を出るしんのすけ
ひろしは昨日医者と話しみさえにも病気を告げることにした、これから長い闘病生活が始まる、途中で気付くより自分から伝えたいというのがひろしの気持ちだった
「ひま…」
「たい?」

病室の廊下の椅子に座りひまわりに話し掛けるしんのすけ

「ひまもオラが絶対お守りするゾ、かあちゃんがいなくてもオラが居るからかあちゃんがいなくなっても泣いちゃ駄目だゾ?」
「うぇ…」

泣きそうになるひまわり

「…たい!」

しかし涙を堪えしんのすけの言葉がわかったように返事をする

「おぉっ!それでこそオラの妹だゾ、偉いゾひまわり」

「みさえ…」
「やだなぁに、真面目な顔しちゃって~」
「真面目な話だいいな…?」
「う、うん…」
「おまえのな…病気…は」
「…」
「癌…だ…」
「!…」
「辛い宣告なのはわかってるでも!これは俺達家族四人が一体になって乗り越えなくちゃならないことだからおまえに話した…」
「…」
「みさえ…?」

押し黙っているみさえ

「…のすけは」
「ん?」
「しんのすけは知ってるの?」
「…あぁ…かあちゃんはオラがお守りするって…」
「そう!」

顔を上げひろしに笑顔を見せるみさえ

「みさえ…おまえ…」
「しんのすけがあんなに明るく振る舞ってるんだもの…母親の私がうじうじしてられないわよ…!」
「みさえ…」

みさえを抱きしめるひろし

「みさえ…頑張ろう…生きよう、生きてしんのすけとひまを一緒に育てよう…みさえ」
「あなた…」

「とうちゃん…もう入っていい?」

扉の外からしんのすけの声がする

「あ、あぁ…!」

入ってくるしんのすけとひまわり

「ほらしんのすけ!幼稚園行きなさい!あなたも会社!」

「あ、あぁ、また夜来るからな!」
「ひまは幼稚園に連れてってオラが見てるゾ!」
「あら、ひまはママと居ても大丈夫よ」
「え!?」
「ひまを面倒見られないほど疲れてないわよ」
「ひまだけかあちゃんといるなんてずるいゾ!」
「なぁにいってんの、ほらひまこっちいらっしゃい」

ひまをしんのすけから受け取ろうとするみさえ

「や~ん!めっ!」

しんのすけの服を掴んで話さないひまわり

「いや~ん、ケダモノォ~」
「もしかしてひま、しんのすけと居たいんじゃないか?」
「おぉっ、そうなのかひま?」
「た~よた~よ」

そうだと言わんばかりにしんのすけにしがみつくひまわり

「ひまはオラが見るから、かあちゃんは早く病気をやっつけてよ!」
「しんのすけ…」

潤むみさえ

「わかった!まかせたぞ、おに~ちゃん」
「まかせとけだゾ!」

「よし、とりあえず今日は父ちゃんと一緒に幼稚園行くぞ、色々園長先生やよしなが先生に説明しなきゃいけないから」
「よろしくねあなた」

「よし!行くぞしんのすけ!」
「ほい!」

病室を出るひろし
その後にしんのすけも続くが病室を出る直前に振り返り

「かあちゃん、病気なんかかあちゃんのでっかいおけつで潰しちゃえばいいんだゾ!」
「こら!しんのすけ!」
「でもかあちゃんがどうしてもって言うなら、オラと父ちゃんがかあちゃんをお守りするからね…」
「しんのすけ…」

「たいも!たいも!」
「おおっ、ひまもかあちゃんをお守りするって!」
「…ありがとう」

「それじゃかあちゃん、また来るゾ~」

元気良く走り去るしんのすけ

「いつの間にかおっきくなっちゃって…」

その後ろ姿に頼もしさを覚えたみさえだった


一ヶ月後
みさえは今だ病室だ
しかし一つ大きな違いがある
みさえの髪は全て抜け落ちてしまっている
抗がん剤の副作用だ 
「かあちゃ~ん!」
「しんのすけ!病院では静かにしなさい!」
「まぁまぁ、しんのすけだってさびしいんだろう」

病室に幼稚園の制服を着たしんのすけ、スーツ姿のひろし、ひまわりが入って来る

「今日はかあちゃんにお土産があるゾ」
「あらなにかしら」

「キャン!」

「し、シロ!」
「シロもかあちゃんに会いたいって言ってたから…」
「しんのすけ…」
「くぅ~ん…」

みさえの頬を舐めるシロ

「シロ…ありがと、しんのすけをよろしくね」

シロの頭を撫でるみさえ
気持ち良さそうなシロ

「あっ、やばい遅刻だ!」

ひろしが時計を見て叫ぶ

「しんのすけ!行くぞ!」
「ほい!ひまも行くぞ!」
「たい!」

慌ただしく病室を出る三人と一匹

「いってらっしゃ~い」

窓の外にいる三人と一匹に叫ぶみさえ

「いってきまぁす!」

それに答える三人と一匹



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幼稚園に着いたしんのすけ
そこには風間くん、ネネちゃん、まさおくん、ぼーちゃんが居る

「しんのすけ!おはよう!」
「おぉ!風間くぅん////」
「しんちゃん!おはよ!」
「しんちゃんドッチボールやろうよ!」
「よ~しやるゾ!」
「ボ~」

マサオの頭を掴むしんのすけ

「僕はボ~ルじゃないよぅ~」
「おおっ、違うのかぁ」
「ひまちゃんはネネとおままごとしましょ~」

ひまわりを抱き上げるネネ

「おおっ」

ボ~ルが明後日の方向に飛ぶ
するとボールを拾う園児

「へっへっへ~」

あのお馴染みのいじめっ子二人組だ

「おいしんのすけ~」
「お前の母さんさぁ~」
「!?」

「おい!止めろよ!」

二人組に詰め寄る風間君

「お前の母さんは癌でさぁ」
「ハゲてるんだろ~?」
「…」
「ちょっと止めなさいよ!」
「ボー!」

仲間達が集まる

「お前達もしんのすけなんかと遊んでるとはげるぞ~」

「や、やめろよ!」

後ろから声がする
なんとマサオ君だ
「なんだよマサオ~」
「俺達に逆らうってのか~?」
「うるさい!しんちゃんが…しんちゃんが…」
「もういいゾマサオ君」
「しんちゃん…」

「オラのかあちゃんは…確かに髪の毛無いゾ…でも…でも」

プルプル震えるしんのすけ

「マサオ君だって無いんだゾ!!」
「…」
「……」
「………」

沈黙

「お、おいしんのすけ…」

「でもオラ、マサオ君大好きだゾ、ネネちゃんも、風間君も、ボーちゃんも、もし髪の毛が無くなってもオラは皆が大好きだゾ!」

「しんのすけ…」

「それにオラのかあちゃんは病気と戦ってるんだゾ!それを馬鹿にするのはゆるさないゾ!」
「な、なんだよ…」
「俺達とやろうってのか?」

構える二人組

「やってやろうじゃないのよ!」
「ボー!」
「う、うん」
「かすかべ防衛隊ファイヤー!」

構える仲間達

「へ、へん!」
「行こうぜ!」

去る二人組


「みんな…」
「しんのすけ、安心しろよ、しんのすけのママだってかすかべ防衛隊皆で守るからさ」
「そうよしんちゃん!大丈夫よ!」
「ボー!」

しんのすけを激励する風間君、ネネちゃん、マサオ君、ボーちゃん

「大丈夫だゾ!かあちゃんは病気なんかに負けないゾ!」
「その意気だしんのすけ!」
「よし!今日はぱーっとリアルおままごとよ!」

ネネちゃん大ハリキリ

「お、オラちょっとお腹が…」
「ぼ、僕も」
「ボー」

そそくさ去る三人

「ま、まってよ~」
「マサオ君は、やるわよね?」
「ぼ、僕もお腹が…」

ドスッ
うさぎのヌイグルミに一発

「やれ、オニギリ」
「うぇ~ん」

マサオの悲しい叫びがこだまする

そして幼稚園が終わりしんのすけとひまわりは病院へ幼稚園バスで送ってもらう

「ほっほ~い、かあちゃんおかえりぃ~」
「たったぁ~い!」
「帰って来たらただいまでしょ!」
「そうとも言う~」
「まったく…ゴホッゴホッ」
「かあちゃん?大丈夫?」

癌はみさえの身体を着実に蝕んでいた
頬はこけ、腕もかなり細くなった

「大丈夫?お医者さん呼ぶ?」
「大丈夫よ、ありがとうしんのすけ」
「ほ、ほい…」
「ほら…手を洗ってらっしゃい、今日隣のおばさんがプリンお見舞いに持ってきてくれたから食べよ」
「プリン?ほっほ~い」

元気良く病室を出るしんのすけ

「ふっふ~ん、プリ~ン」

しんのすけが病室に戻ろうと歩いていると、病室からひまわりの泣き声が聞こえる

「んも~ひま、かあちゃんに心配かけちゃ駄目だ…ゾ…」

しんのすけが病室に入るとそこには血を吐いてうずくまるみさえの姿があった

「かあちゃん!」
「びぇ~ん」
「かあちゃん!かあちゃん!」

いくら呼び掛けても返事は無い


そしてみさえはそのまま集中治療室に入った

「しんのすけ!」
「父ちゃん!」

ひろしが息を切らして走って来る
ひろしに抱き着くしんのすけ

「かあちゃんが…かあちゃんが…!」
「しんのすけ!大丈夫だ、父ちゃんが来たからな大丈夫だ…!」
「野原さん…」

医者が話し掛ける

「先生!みさえは…みさえは!」
「旦那さん…お子さんを…」
「しんのすけ…父ちゃん先生と…」
「やだ!」
「しんのすけ…」
「オラはかあちゃんをお守りするんだゾ!絶対絶対動かないぞ!」
「…先生、こいつにも…しんのすけにも聞かせて下さい…」

「わかりました…」

「奥様は…このままお亡くなりになるまで意識を取り戻さない可能性が高いです…」
「…!」
「奥様の体は衰弱しきっています、今は点滴と酸素を送り込む事によって延命治療をしているに過ぎません…」
「そんな…」
「旦那さん…そしてしんちゃん…覚悟はしておいて下さい…」

集中治療室のガラスの向こう側
みさえが横たわっている
心電図の無機質な電子音だけが虚しく聞こえていた


みさえが意識を失ってから二ヶ月が経った
そして野原一家はある決断を迫られる

「かあちゃんおかえりー!」

ガラス越しにみさえに話し掛けるしんのすけ

「今日ね、マサオ君がまたネネちゃんに怒られて泣いちゃったんだゾ~」

幼稚園かばんから紙を取り出す

「ほらみてかあちゃん、オラ今度のおゆうぎ会で浦島太郎やるんだゾ、風間君が浦島太郎で、ネネちゃんが竜宮城のお姫様、オラは亀の役だゾかあちゃんも見に来てよね!」

嬉しそうに話し掛けるしんのすけだが、みさえからの反応は勿論無い
そこにひろしが沈痛な面持ちでやってくる

「しんのすけ…ちょっとこい」
「…ほ~い」

廊下に出る二人

「しんのすけ…かあちゃんをな…」
「…」
「もう休ませてあげよう…」
「…!」

「休ませる…?」
「今かあちゃんはとっても疲れてる…このままかあちゃんに辛い思いさせたくないだろ…?」
「かあちゃん死んじゃうの?」
「…先生が、かあちゃんが一番良い方法で休ませてくれるらしい…」
「…」
「しんのすけ…わかるな…?」
「わからないゾ!オラ子供だからわからないゾ!」

再び集中治療室にもどるしんのすけ
そしてガラス越しにみさえに話し掛ける

「かあちゃん起きろ!かあちゃん!雨降ってきたゾ!洗濯物濡れちゃうゾ!」
「しんのすけ…」

その様子を後ろから見て涙を流すひろし

「かあちゃん!父ちゃんがまた女の人の香水の匂いつけて帰ってきたゾ!ひまわりがお腹空いたって泣いてるゾ!」

涙を流しながら叫ぶしんのすけ

「かあちゃん!オラまたケツだけ星人やっちゃうゾ!戸棚のお菓子食べちゃうゾ!かあちゃん!オラのおゆうぎ会見に来てよ!かあちゃん!」

「しんのすけ…!」

しんのすけを後ろから抱きしめるひろし

「父ちゃん…うわぁ~ん!」
「しんのすけ…泣け沢山泣くんだ、泣いていいんだ…」
今までの涙が一気に押し寄せた様に涙を流すしんのすけ
「し…んの…すけ」
「!」

みさえの声が聞こえた気がした

「みさえ…?」
「かあちゃん…?」
「や~ねぇ…二人ともなに泣いてるの…」

みさえに目をやればみさえが目を開けてこちらを見ている

「先生…先生!」

先生を呼びに走るひろし

「かあちゃん…起きたの?」
「しんのすけ…アンタ幼稚園は…」

そこにひろしが医者を連れて戻ってくる

「これは…」
「先生!みさえは…みさえは治ったんですか!?」

ひろしの問いに首を振る医者

「患者さんにはよくあるんです…亡くなる前に最後の力を振り絞って一時期だけ回復する事が…」
「そんな…」
「次倒れたら…」
「…」
「野原さん…どうしますか…このまま入院を続ければ今の回復の状態を長引かせる事は出来ます、しかしそれも焼け石に水です…それならば」
「先生…みさえを…退院させてやってください…」
「野原さん…」
「最後に…最後にみさえとしんのすけとひまわりとシロで思い出を作りたいんです…」
「…わかりました、すぐに手続きをしましょう…」

去る医者

「しんのすけ…みさえ…帰ろう、家へ」

そしてみさえは家に帰って来た
野原家に久しぶりの明るい笑い声が響く

「しんのすけー、準備できたの~?」
「ほっほ~い、バッチリだぞ!」
「よ~し、じゃあ行くか!」

野原家はドライブに出掛けた、勿論シロも一緒だ

「まずは何処行くか」
「ほいほい!オラ最近出来たアクション仮面ミュージアム行きたいゾ!」
「しんのすけ~、今日はみさえの…」
「あら良いじゃない、行きましょうよ」
「そうよひろし~、出世できないわよ~」
「出世は関係ないだろ出世は!」

いつもの空気が流れる車内

そんなこんなで結局アクション仮面ミュージアムに到着

「ほっほ~い!かあちゃんとうちゃん早く早くぅ~ん!」

走り回るしんのすけ

「ほらしんのすけ!走ると危ないわよ!」
「平気平気ぃ~」
「まったくもう…」
「ほら行こうみさえ」
「たい!」
「キャン!」
「シロはヌイグルミのフリしてなさいよ!」
「くぅん」

中に入る野原一家

「おぉ~、アクション仮面が沢山いるゾ!」
「ふふっ、しんのすけったらあんなにはしゃいじゃって…」
「みさえと久しぶりのお出かけだからな、嬉しいんだよ」
「父ちゃん父ちゃん!あっちに美人なおねいさんがいるゾ」
「なっなに?何処だしんのすけ!」


みさえの鋭い眼光

「あなた…後でお話が」
「お、お話だけで終わる?」
「父ちゃんなんで膝が震えてるの?」


ミュージアムから出て来る野原一家
しんのすけの手にはみさえの手がしっかりと握られている
勿論ひろしは荷物持ちだ

「楽しかったゾ~」
「すっかり日が暮れちゃったわね~」
「おい!少しは持ってくれよ!」
「あらや~ねぇ男の癖に」

「力はかあちゃんのが上だけどね…」
「その通りだしんのすけ」

カキーン
コキーン

「さっ、帰るわよ」

ひろしとしんのすけの頭にはでっかいたんこぶ

「キャッキャッ、うへぇ~い」

その様子を見てひまわりも楽しそうだ

「あ、帰る前に一カ所寄りたい場所が…」
「ん?どこよ?」
「まぁ着いてからのお楽しみって事で!」

ひろしが車に乗り発車させる
「父ちゃんどこ行くの~?」
「まぁすぐわかるよ

そして車が停まる
そこは北千住駅

「ここ…」
「そう、俺がみさえにプロポーズした場所…野原一家が始まった場所だ」
「あなた…」
「ここでとうちゃんとかあちゃんは結婚したの?」
「う~ん、俺がかあちゃんに結婚してくださいってお願いしたんだよ」
「ひろしの転落人生の幕開けの場所か…」
「しんのすけ、よくわかったな」

カキーン
コキーン
やっぱりたんこぶが出来る

「じょ、冗談だよみさちゃ~ん」
「まったく…!」

ぷりぷり怒るみさえ

「かあちゃん、とうちゃん」
「ん?どうしたのしんのすけ」
「そんなに痛かったか?」
「んーん…あのね」

ひろしとみさえを見つめるしんのすけ

「とうちゃん、かあちゃん、オラを二人の子供にしてくれてありがとうだゾ!」

「しんのすけ…」

「あと、ひまわりをオラの妹にしてくれてありがとう!」

「しんのすけ…」

涙を流すみさえ

「ちきしょう!バカヤロウ!なんだか目が痛いぜ!ほらみんな並べ写真撮ろう!」

ひろしが涙を堪えみんなを並ばせる

北千住駅前に並ぶ野原一家

「しんのすけ…」
「ひまわり…」

みさえとひろしがしんのすけとひまわりに話し掛ける

「ん…なぁに?」

「俺達の子供になってくれてありがとう」

カシャ
シャッターの下りる音
その写真にはいつもと変わらない野原一家の幸せな風景があった

北千住駅で写真を撮って一年の月日が流れた
しんのすけは少し背が大きくなった
今年小学一年生だ
ひまわりは少しだが言葉を喋る事が出来るようになった
ひろしは相変わらず係長だ

「ひま~?」
「う?なにおにたん」

みさえが居たが今は誰もいない病室のベットにひまわりとしんのすけが座って居る

「オラこれから小学生だゾ、だからひまわりが何かあったらオラが今までよりもっと沢山お守りするから、オラに言うんだゾ?」
「ほい!」

ひまわりは完全にしんのすけ似だ

「おにたん」
「どーしたひまわり?」
「おちっこ」

急いでひまわりをトイレに連れていくしんのすけ

「もぅ~、全くぅ、手のかかる妹だゾ」

「ひま、ちゃんと出たか?」
「ほい!」
「よし、じゃあいくゾ」

ひまわりと手を繋ぎ歩き出すしんのすけ

「先生…ありがとうございました…」

病院の前ではひろしが先生に頭を下げている

「ほっほ~いとうちゃ~ん」
「ひろち~」

しんのすけとひまわりが歩いてくる

「こらひま!ひろしじゃなくてパパだろ!」
「ほい!」
「わかったか?」
「ほい!ひろち!」
「駄目だコリャ…」
「とうちゃん早く行こうよ!」
「あぁ、そうだな…それじゃ先生…また」
「はい、お元気で」


車に向かって歩き出す三人


「ほっほ~いオラ助手席~」

ドアを乱暴に開けるしんのすけ

「しんのすけ!」
「ほいほ~い」

やり直し丁寧に開けて閉めるしんのすけ

「まったくぅ~妖怪ケツデカオババは相変わらずうるさいぞ~」
「なぁんですって!?」

グリグリグリ~

「ぬおぉ~ん、何だか久しぶりだゾ~」

後部座席にはみさえの姿
北千住駅で写真を撮ったあの後、みさえの病状は悪くなる所か快方に向かっていったのだ
医者もこれには驚き奇跡としか表現出来ないと言った

癌の腫瘍も小さくなり手術で簡単に切り取れた
そして、リハビリを重ね今日ついに退院の時であった

「よし!帰るか我が家に!」

ひろしがエンジンをかけ、発車する

「あなた、しんのすけ、ひまわり…」
「なぁにかあちゃん?」
「どうしたみさえ?」「かーたん?」

「守ってくれてありがとう…」
「…へへっ、気にすんなよみさえ」
「なよー」
「そうだゾ、これからも母ちゃんはオラがお守りするゾ!」

涙を堪えるひろし
涙を流すみさえ
少し大人になったしんのすけ
少し大きくなったひまわり


「よし!しんのすけ着いたぞ!」
「あんた入学式で変な事しないでよ~」
「大丈夫だゾ!オラお兄ちゃんだもん!」

胸を張るしんのすけ

「よ~し、写真撮るぞ!」

校門の前に並ぶ野原一家

「はい!チーズ!」

カシャ

写真に写ったのは笑顔に溢れた野原一家
これから先もずっと
この笑顔が続きますように…







終わり



みさえ2.jpg




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コメント 2

名無し

泣きまくった
by 名無し (2014-10-15 23:51) 

クレヨンしんちゃん大好き!

涙腺がはちきれそうwwwいい話をありがとう!
by クレヨンしんちゃん大好き! (2015-02-10 01:12) 

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