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女の友情 [感動]







降りしきる雨の中、私は繁華街の人の波に飲まれるように
駅へ向かい歩いていました。


半年お付き合いをした彼氏と別れ話をした帰り道でした。

別れは私から切り出しました。
出会いの日から今日まで、私は彼が妻帯者であることを知りませんでした。


言われてみると、おかしいなと思う節はいろいろありました。
土日は出張でいない、とか、
夜9時に電話しても次の日の昼間に電話がかかってきて、
昨日は寝てた、と言ってみたりとか。


そんな「あぁ、そうか」
なんて思いが私を駆け巡りました。


その日はイタリアンを食べに行き、
そのままホテルへ行きました。

愛情を確かめ合ったと思ったのに、
彼は

「もうこれ以上嘘はつけないから言うけど、
俺結婚していて子どももいる。」

と、タバコを吸いながらそうさらりと言ってのけました。


ジョークと思った私は笑いながらじゃれて彼に抱きつきました。
彼は無関心のように、「本当だから、ごめん」といいました。


そこからの記憶はあいまいです。
興奮して、何をしゃべったのかは、あまり覚えていないです。

とりあえず、服を着て、私は一人ホテルの部屋を飛び出ました。
そして、雨の中、駅に向かって歩いていました。


そんな時は自分以外のものがカラフルに見えます。
自分は一人、モノクロです。


悔しくて、悲しくて、寂しくて。

自身をいたたまれなくなった私は、
優しそうな光を放っているカフェに入り、
何か甘いものを飲むことにしました。


カフェの中は木目調で、
ナチュラルな感じがとても心地よく、
平日の22時にしてはお客さんが入っていました。

私はホットココアを注文し、
携帯電話を取り出しました。

そして別れたことを友達数人にメールをしました。








すると友人の一人からすぐに電話がかかってきました。

「今どこ?」


話をすると友人も近所にいるとのことで、
こちらへ向かうといいます。

私は一人の時間がほしかったのですが、
彼女ならいいか、と場所の詳細を伝え、電話を切りました。


15分ほどすると、
彼女がやってきました。


仕事帰りのようで、
傘で覆いきれなかったのか半分ぬれた大きなかばんを抱えて、
大急ぎの様子でカフェに入ってきました。

二人がけのテーブルなのに、
彼女は対面ではなく、私の横にいすを移動させ、
ホットコーヒーをオーダーしました。


実は、彼女とは、昔に共通の男性を取り合った仲でした。
仲良しグループで遊んでいた大学生の頃、
共通に大好きな人ができてしまい、
いつの間にか険悪な関係になっていました。


結果として、その共通の好きな人は、
私も友人ものどちらもに手を出してしまい、
それがきっかけで女同士の友情が硬く結ばれることになりました。


別れ話のいきさつを友人に話しました。

涙がこぼれるのを私は抑えることができず、
無理から笑おうとすればするほど、
ほほに涙がつたいました。


その間彼女は、
ずっと私の手を握り、
何も言わず、ただうなずいているだけでした。

一通り話をすると、
私は随分落ち着きを取り戻しました。


ジョークも少し言えるようになりました。


彼女も安心した様子で、
肩で肩を突いてきました。


目を腫らせて私たちは店を出ました。
雨も止んでいて、ネオンが滲んでみえました。

駅までに続く歩道橋で、彼女は私に言いました。


「彼氏は変わるよ。でも友達は変わらないよ。」


少し照れぎみに言う彼女に私は爆笑しました。

笑うことでもっと照れる彼女に、私はもっと爆笑しました。

深い愛情を感じながら、
私は彼女に見送られ、最終電車に乗りました。


女の友情は続かない、なんていう人もいますが、
私は友情をかみしめながら、家に帰りました。
一人じゃないことが、とても幸せでした。


カフェ.jpg






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