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おじいさんの鶴 [感動]

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僕が小学生の頃の話です。
いわゆる「悪ガキグループ」五人組の中の一人だった僕。
とくに暴力を振るうとか、陰湿ないじめをするとかいうのではなくて、例えば黒板にデカデカとテストの答えを書いてのカンニングをしたり(黒板を背にする先生は意外と気が付かないという)、ありったけの蛙を捕まえてきて昇降口玄関に放したり、窓から外に向けてオシッコを飛ばして競争したり…。

そんなくだらないイタズラをして楽しんでいた、絵に描いたような「昔のガキ大将グループ」だったのです。

クラスの仲間たちもそんな僕たちを半分諦めたような、あきれたような様子で見ている子がほとんど。
先生も、「またお前らか!」と怒鳴り声を上げることに慣れてしまったような様子だった気がします。
そんな毎日を送りながら、僕たちはだいたいいつも一緒に行動していました。

帰りは当然、道草をしながら帰るので、家に着くのが大分遅くなってしまいます。
それから宿題をやったりご飯を食べたり、明日の準備などなど…。
子供ながらにやることは色々あるもので、毎日母親からは小言を言われていました。

「もう○○くんたちとは遊んじゃだめ!」と言われることも少なくありませんでしたが、そんなことで付き合うことを辞めるような僕たちではありません。
かといって行動を改めるでもなく、ほとほと両親は頭を悩ませていたように思います。
今ではその頃が懐かしいと、年老いた両親は笑っていますが。


そんなある日のこと。
いつものようにダラダラと行きつもどりつしながら下校の途についていた僕たち。

今日はいつもと違うコースを帰ろうということになり、普段の道筋を外れて違う道を通って帰ることになったのです。
その日あった出来事や、テレビやゲームの話をしながら帰っていると、大きな川に出ました。

ここは雨が降った後は水嵩が増し、流れが急になる川です。
その川の中央に、なんだか老人らしき人影が見えたのです。
かがみこむようにして川の中に手を突っ込んでいる老人。
僕たちは慌ててその老人の下へ向かいました。

まるで入水自殺か、はたまたおぼれかけているように映ったのです。


近付いてみると、八十歳に届くかどうか、というくらいの年齢のおじいさんでした。
なにやらぶつぶつと独り言を言いながら水の中に両腕を肘まで突っ込んでいます。

初めは岸辺から声をかけるだけの僕たちでしたが、流れが穏やかなことを確認し、一番体格のいいRくんがざぶざぶと川を渡り、おじいさんを引き寄せてきました。
その首には名札が掛けられていて、そこには住所と電話番号、名前が書いてありました。

ちょうど学校の近くの住所が書いてあることが分かり、また、苗字も珍しいものでしたので、すぐに家を見つけることができました。
その家の前では、どうやら家族らしい人たちがオロオロしている姿が見られました。

おじいさんと僕たちの姿を発見し、安堵の表情が広がっていったその女の人は、おじいさんの娘さんでした。


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おじいさんはひどい認知症を患っており、時折ふらりと居なくなってしまうのだと、その娘さんは子供の僕たちに丁寧に教えてくれました。
行動も予測が出来ないらしく、川に行く理由もまったくわからないとのこと。


幼いながらに、認知症ってやっかいなんだな、と感じました。
その後も時々、帰り道でそのおじいさんを見つけました。

見た目は普通のおじいさんなので、まさか徘徊だとは誰も気付かないのでしょう。
少し様子がおかしいかな?と感じる程度で、気にも留めないようでした。
それでも僕たちはおじいさんの事情を一応知っているので、連れ帰っては娘さんにお礼を言われるのでした。


そんなある日、ふとそのおじいさんの家の前を通ったときのこと。
どうやら、お葬式の準備がされているようでした。
家の前に提灯が出してあるのです。

まさかあのおじいさんが…?と気になったぼくは、そっと玄関まで近付いていきました。
するとその時、おじいさんによく似た顔の男の人が出てきて、怪訝そうな顔で僕を見ました。

「もしかして、いつも助けてくれていた子達のひとり?」と聞かれ、うなずく僕を中に入れてくれました。


祭壇には、僕が見知っているおじいさんより少し若く、生き生きとした顔をしたおじいさんの写真が飾ってありました。
仏壇のはじっこに、小さな折鶴が五羽、糸に通されて飾ってあります。
そこに娘さんがやってきました。

その五羽の鶴は、僕たちと出会ってからおじいさんが作ったのだそうです。

それまでそんなことをしたことはなかったのに、まるで僕たちにあげるつもりで作っていたかのように、人数分の五羽の鶴。


僕は、その鶴を娘さんから頂いて帰りました。
なんだか切ないような気持ちがこみ上げてきて、夜中にひとりでおじいさんを思い出してちょっと泣きました。


今でも、僕たち五人が集まると、必ずあのおじいさんの話になります。
そして、五人中三人が介護の仕事に就いたことは、きっとあの時の経験があるからなんじゃないかな、と思っているのでした。


おじいさん.JPG


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