息子のお弁当 [感動]
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誰にでも好き・嫌い、得意・不得意があると思います。
私は料理の才能がまるでないようで、はっきり言ってしまえば苦手と言うよりも「嫌い」と言っても良いのではないでしょうか。
掃除、洗濯もあまり好きではありませんし、「家事全般」において不得意だと言えるでしょう。
それでも結婚してなんとかそれなりに出来るようにはなりました。
やはり女に生まれたからには主人の健康はきちんと守ってあげたいものですし、まさか主人に家事も仕事も押し付けるというのでは立場がありません。
自分なりに出来る料理を色々工夫してやれるように苦心してきたつもりです。
そして月日は流れ、私にもかわいい男の子が生まれました。
初めての妊娠と出産を経験して生まれたその子は目に入れても痛くないくらいかわいい存在で、家族三人で慎ましくも幸せに日々を送っていました。
息子もすくすくと成長し、幼稚園では仲の良いお友達や優しい先生に囲まれて毎日楽しく過ごしていました。
そんなある日、息子が珍しく暗い顔つきで帰ってきたのです。
何があったのか聞いても答えてくれず、それでも夕方になる頃にはすっかりいつもの息子に戻っていたのであまり気にもとめませんでした。
しかし、それからも忘れた頃にまた暗い顔で帰ってくるようになったのです。
例のごとく聞いても答えてくれず、時間が経つと普通にテレビを見て笑っている息子。
それでも何度かそんなことがあったので、私も心配になってきました。
そこで、幼稚園の連絡ノートで担任の先生に「息子に最近変わった様子はなかったか」聞いてみることにしたのです。
翌日、普段と変わらない様子で幼稚園から帰ってきた息子。
気にしすぎだったかな…?と思いながら連絡ノートを見てみました。
昨日は月に一度のお弁当の日だったのですが、息子は自分のお弁当を隠すようにして食べていたようだったと書かれてありました。
それを見てハッとしました。
息子が暗い顔つきで帰ってきていたのは、そういえばいつもお弁当の日だったのです。
きっとお弁当に何か理由があるのだということに気が付いた私は息子にそれとなく聞いてみることにしました。
息子は始め、何も答えようとはしませんでした。
「なんでもない」の一点張り。
それでもゆっくり話して聞かせてくれた答えはこうでした。
周りのお友達のお弁当はみんなカラフルで色々なキャラクターになっていたりして、見ているだけで楽しそうなお弁当なのに、自分のお弁当はまるで「お父さんのお弁当」みたいで恥ずかしいのだと。
だけど、それを私に言ったら私が傷ついてしまうだろうと思い、じっと我慢していたようなのです。
お友達がお弁当を見せ合ったり交換しあったりしているのが羨ましいけれど、そんなことを言ったらわがままだろうと感じていたと息子。
口に出して言ってしまったことで息子は自分を責めたのでしょう。
大粒の涙をぽろぽろこぼしながら「お母さんごめんなさい」と謝ってきました。
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そんな思いをさせてしまっていたことに、私も心から息子に悪い事をしたと思いました。
そして、その日から私の「お弁当の練習」が始まったのです。
本屋さんから「かわいいキャラ弁」の本を数冊購入、また、ネットでも色々研究しながら毎日お弁当の中身を練習しました。
卵焼きは切り方次第でハートや星に出来ます。
野菜もただ茹でただけ、炒めただけではなく、海苔で飾り付けしたりチーズを貼り付けたりすることで動物やキャラクターに変身です。
どれも細かい作業が多く、お弁当作りと言うよりは工作のようなものだと感じました。
それでも息子がもう幼稚園のお弁当の日に肩身の狭い思いをすることがないようにと毎日練習を続けました。
そしてまた、お弁当の日がやってきました。
前日遅くまでかかって下ごしらえをし、朝早くから調理したお弁当。
今まで練習を繰り返してみましたが、やはり自分のセンスのなさと言うものは完全に払拭することはできませんでした。
それでも、目に鮮やかなお弁当に仕上げることができました。
それを持たせて息子を幼稚園に送りだしたのです。
これで今日は少しでも楽しいお弁当の時間が過ごせるようにと祈りながら。
そして、夕方。
幼稚園から帰ってきた息子は、なんだか照れくさそうな顔をしながら、それでも笑顔で帰宅しました。
私のところへ駆け寄り、かばんから誇らしそうに空になったお弁当箱を出してくれた息子。
今日のお弁当はどうだった?と聞いてみると、今までで一番楽しいお弁当の時間だった、と、満面の笑顔で答えてくれたのです。
それからは息子の「お弁当リクエスト」が聞かれるようになり、なんだか辛口の評価までつけてくれるようになりました。
考えてみると、息子の為にお弁当を作ってあげられる期間と言うものは、思っている以上に短いのかも知れません。
それまでの時間、下手な料理でも愛情込めて一生懸命に作ってあげたいな、と思っています。
なんとなく、すこしずつお料理が好きになってきたかな…?そんな風にも思えるのでした。
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