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大切な友達とのこと [感動]

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私が通っていた小学校はいわゆる「田舎の小学校」で、自然に囲まれた緑豊かな土地に静かに立っていました。
クラスは各学年ひとクラス、小学校六年間はクラス替えも無く、卒業までそのまま持ち上がりの形だったのです。

田舎の子供はおおらかで素朴な子供たち…そんなイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。
確かに、近くに山や川があるため遊ぶ場所に困ることはなく、時には野うさぎに遭遇したり山へ探検に行ったり、思春期の敏感な子供を育てるにはとてもいい環境だと言えるかもしれません。
ですが、だからと言って何も問題が起こらないという訳では決してなく、子供間に生じる問題に、田舎も都会も大差は無いような気がします。
実際私のクラスにも様々な問題はありましたし、中でもある女の子に対する「いじめ」のような状況は長期に渡って続いたと思います。

その女の子は、名前をなつみちゃん(仮名)と言い、物静かでとても穏やかな性格をしていました。
背が高くほっそりとスタイルのいい子だったことを今でもよく覚えています。
そんななつみちゃんには、ある「クセ」がありました。
時々、瞬きをパチパチッ、パチパチッと繰り返したり、首を左右にかくんかくんと傾けたりするのです。
無意識に「うん、うん」と唸っているような声を出すこともありました。
それは「チック症」という症状による不随運動で、本人の意思とは関係なく起こるものでした。
一説には神経が人より細やかで繊細な子供に多く見られるという説もあるようです。

しかし、当時幼かった私たちにはそんなことが理解出来ず、「なつみちゃんは変な人だ」というレッテルを貼ってしまっていたのです。
なつみちゃんはクラスでも孤立した存在になってしまい、移動の際も下校の際もほとんど一人でした。
あからさまに無視をするとか暴力を振るうとか、物を隠す、壊すなどの行為こそなかったものの、なんとなく皆親しくしたくないといった空気が蔓延していたように思います。

実は、私の祖母となつみちゃんの祖母は昔からの友達で、幼稚園の頃はなつみちゃんとばかり遊んでいました。
家も近所だった為、いつもどちらかの家で過ごしていました。
その頃からなつみちゃんにチックの症状があったかどうかは覚えていませんが、私にとってなつみちゃんは大切な友達だったのです。
それが小学生になり、なつみちゃんよりも親しい「親友」と呼べる存在が出来、少しずつなつみちゃんとの距離はひらいていきました。
自己主張をあまりしない性格のなつみちゃん、私が違う友達と仲良くしていても何も言わず、ただ静かに過ごしていました。


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少しずつなつみちゃんが一人ぼっちになっていって、私は後ろめたい気持ちを隠し持ちながら、それでも見ないふり、気付かないふりをしていたのです。
ひとりでいるなつみちゃんに対して申し訳ない気持ちを抱いていても、その状況を変えようとする勇気が当時の私にはありませんでした。

そんな時、ある事件が起こりました。学校から帰ろうと外へ出ると、校門の外でなつみちゃんがクラスの女子数名に取り囲まれているのです。
何事かと思って近付いていくと、クラス内でも気の強い子がなつみちゃんを責めています。
どうしてそんな事態になっているのか分かりませんでしたが、そのただならぬ雰囲気に声をかけることが出来ません。
なにも言わずにただ俯いているなつみちゃん。
その手から、一人がランドセルをもぎ取り、近くの川に投げ捨てました。
誰もがあっけにとられてその様子を見ています。
それまで石のように固まって動かなかった私の体が少しだけびくりと震え、その次の瞬間、私はランドセルが流されていこうとしているその川に飛び込みました。
悲鳴をあげる女子の声を背中で聞きながら、なんとかランドセルを掴んで川から戻りました。
私はずぶぬれになりながらなつみちゃんにランドセルを手渡し、誰にも何も言うことが出来ず、そこに呆然と立ち尽くすだけでした。
私の様子を見て泣き出す子もいれば逃げるようにその場を立ち去る子もいました。

気付くと、私はなつみちゃんと並んで黙って一緒に帰宅の途へついていました。

ポツリとなつみちゃんがひとこと「ありがとう」とつぶやきます。
同じようにポツリと私も「ごめんね」と返します。

会話はその二言だけでした。
きっと私もなつみちゃんも、他に何を言えばいいのか分からなかったのだと思います。
もっと責めたかったはずなのにそれをしなかったなつみちゃん。
それが彼女の優しさであり、強さなのだと知りました。

それから卒業まで、残されたわずかな時間で私たちが元通りの仲に戻ることはありませんでしたが、なつみちゃんと私の間には、なんとなく通じるものがあったように思います。

後悔と反省は、似て非なるもの。
後悔の延長線上に「反省」することが出来るかどうか。
それでその先は大きく変わるように思います。
私は、あのもの静かななつみちゃんにそんなことを教わったような気がするのです。


小学生.jpg


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