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みぃと走った日のこと [感動]

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小さい頃から動物が好きで、特に猫が一番大好きな動物でした。
物心ついた頃にはすでに家に猫がおり、以後途切れることなく常に猫を飼っていました。
猫を撫でると血圧が下がるとか、ゴロゴロと鳴らす喉の音を聞くことで人の精神が不思議と落ち着くとか、色々な話しを耳にしたことがありますが、私は「猫はきちんと人間の言葉を理解して行動している」という確信がありました。
なので、猫の持つ不思議な力で私たちはいつも助けられているのだと信じているのです。


私が今まで飼ってきた中で、一番印象に残っている子がいます。
茶トラの雌猫で、名前を「みぃ」といいました。

みぃは普段は外に居るので、その行動範囲は私が把握できないくらい広いものでした。
ある時は小学校まで迎えに来てくれたこともありました。

たまたまみぃの行動範囲の中に小学校も含まれていて、ちょうど私の下校の時間にその付近を散歩していたというだけだったのかもしれませんが、それでも帰り道を大好きなみぃと帰るのはとても特別な想いがしたものです。
私の歩調に合わせながら、決して離れないようにして歩いてくれるみぃは、なんだか頼りになるお姉さんのようでした。


そんなある日のことです。
その日は、私の大嫌いな校内マラソン大会の日でした。
小学校を出て、3キロの道のりを走るということは何よりも走ることが苦手な私には苦行のようなものでした。
前日から雨が降ることを祈り、てるてる坊主をさかさまに吊るすと言うおまじないまでしたのに、そんな私の願いも虚しく、その日は晴れ渡った青空が誰の目にも眩しく映ったことでしょう。

嫌なことがある時は決まってお腹が痛くなる私。

キリキリと痛むお腹を抱えるようにしていると、ふと私のそばにみぃがやってきました。
不思議そうに私を見上げるみぃ。
何気なく私はみぃに話しかけました。
「みぃが一緒に走ってくれたら、私も頑張れるかもしれないのにな〜」と。

そしていよいよ、本番直前を迎えました。

気合を入れて準備運動している子、楽しそうに友達とおしゃべりをしている子、そして、羨ましいことに体調不良で見学することになっている子。
それぞれの顔を眺めながら、私はため息しか出ません。

いやだいやだと思っていても、結局は逃げ出すことが出来ないのだと思うと、もう半分どうでもいいような気持ちにさえなってくるのでした。
そして、「ばん!」というピストルの音と共に私たちは一斉に走りだしました。

最初からスピードを上げていく集団からは大分遅れて、私もよたよたと走り出しました。
流れる景色を楽しむ余裕なんかある訳がありません。

街道で応援してくれている人たちの声に耳を傾けることも出来ません。
早い段階で私の心臓はもうすでにパンクしそうなほどにバクバク言い出しました。
息をする度になんだか胸が痛いような気もします。


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つい涙ぐんでしまった私の視界に、あるものが見えました。

茶色くて小さな塊みたいなものが、道路のはじっこに見えるような…?あれは…?


それは、なんとみぃだったのです。
見間違いではありません。

いつもの見慣れた大好きなみぃが、私をじっと見ているではありませんか。
えっ!?と思った次の瞬間、みぃは私の隣にやってきて、そして並んで走り出したのです。

あの時、一緒に学校から帰った日のように、私のペースに合わせてずっと隣に並ぶように走っています。
そんな私たちの姿に気付いた人からは驚きの声が上がりました。

そして、いつの間にか、私と同じく走るのが苦手で、いつも遅れをとってしまっている他の子たちも一緒になって走っているではありませんか。


その時、私はなんとも言えない満たされたような感覚を覚えました。
一人ではないのだという安心感なのか、みんなと一緒なら頑張れる、乗り越えられるというような仲間意識なのか…。

あんなに嫌で嫌でたまらなかったマラソン大会が、その瞬間に楽しいものに思えたのです。
今まで最期まで走りきることが出来なかった子も、泣き虫で泣きながら走っていた子も、そして私も、みぃと一緒にゴールすることが出来ました。
その時に周りから湧き上がった歓声は、今も忘れることが出来ません。
そして、私たちをゴールまで導いてくれたみぃは、気が付くともう姿を消していました。


マラソン大会が終わって急いで家に帰ってみると、みぃは何事もなかったかのように私を出迎えてくれました。
いつものようにゴロゴロと甘えるように喉を鳴らしながら。


その後みぃは10年生きて、そしてふらりと姿を消してそれっきりになってしまいました。
猫は自分の死体を飼い主に見せないように、死期を悟ると姿を消すといいます。

ですが私は、みぃが姿を消してもきっといつまでも生きていてくれるような気がしているのです。
あれからもうかなりの年月が流れましたが、私と一緒に走ってくれたみぃは、きっといまでも誰かの隣に並んで走っているのではないでしょうか。
そんな風に、これからもずっと思っていたいのです。


ネコ.jpg


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タグ:親友 感動 ネコ
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