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私らしさ [感動]

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遠距離恋愛というものに、自分は縁がないと思っていました。

もともとそんなに恋愛経験が多いほうではなかったですし、性格的にも外見的にもあまり女性らしいとはいえないと自分でも思っていましたので、こんな自分を好きだと思うようになるには、時間をかけて近くでずっと見てきた人でなければ無理だろうと思っていました。
そうでなければ、私も素直にはなれないし、幼馴染がなんとなくそのまま付き合う形になっちゃった、というのが理想の形でした。
お互いに無理することなく、背伸びすることなく付き合っていって、いずれそのまま無難に結婚してしまって、同じ土地で生まれ育った者同士が同じ土地で死んでいくというのが一番自然なんじゃないだろうかと思っていました。
なんせ私はこんな片田舎から出たことがないので、この土地の言葉や風習がもう身に染みてしまっています。
それを相手によって変えてしまうことは到底無理だと感じていました。

そんな私でしたが、友人、知人は県外にもたくさんいるもので、その中の一人となんとなく付き合う形になってしまいました。
まさか県外の相手と、しかも遠距離恋愛に身を投じることになるとは、まったく予想外の展開でした。
一抹の不安を覚えながらも一年、何とか頑張ってきました。
時々会いにいっては短い時間を一緒に過ごし、その時間を楽しむことも出来ました。
なんだ、意外と自分は遠距離恋愛向きなのかもしれない、まだ続けていけるかもしれない、と思っていたのですが、なかなか事はうまくいかないものです。

一年を過ぎた頃から、小さなケンカが多くなってきました。
なかなか会えないのだから仕方が無いのだと思い、いつも最後は私が折れるようにして収束していたのですが、ある時彼が許しがたいことを言ったのです。
「お前の言葉づかいは汚い。」
それは、私の住むこの土地の方言を指して言った言葉でした。
今まで無理をして標準語を使うように努力してきたし、そんな私に対して、「気にすることないから、そっちの方言で喋っていいよ。」と言ってくれていたのに、ここにきて「言葉づかい」を馬鹿にされたのです。
それは、私自身を否定されたも同然でした。
そのあまりのショックに言葉を失いましたが、好きだという気持ちがあったからか、悔しい気持ちよりも「悲しい」という気持ちの方が大きかった気がします。


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一人で悶々と考え続ける日々が続きました。
そういえば、最近連絡するのはいつも私の方からだったな、ということにもなんとなく気が付きました。

そんな時、いつも私の相談にのってくれていた友人が会いに来てくれ、話を聞いてくれたのです。
友人いわく、いつも私が無理をしているように見えたとのこと。
無理してお金を作って会いに行くけど、向こうがこちらに来てくれることはなかったこと、髪形を変えろ、服装をもっとこうしろ、と、ありのままの私を見てはくれなかったこと、ここまで頑張ってきたのに、「方言」を馬鹿にされるのはルール違反だと、自分のことのように怒ってくれていました。
そんな彼女が最後に私にこう言いました。

「縁のないところに結ぼうとすると、どこかに無理が生じるんだよ。」

それは、なんだかとても腑に落ちる言葉でした。私が私で居られないような付き合いをしていくことに意味はあるのだろうか、お互いを高めあえるのならそれでも良かったけれど、これでは一方的に私が蔑まされて終わるだけだということに気が付きました。

その友人は、中学の頃から私をずっと見てきてくれていました。
だから今更言葉にしなくても分かり合えるし、お互いのいいところも悪いところも分かっています。
そうなるには時間がかかるし、短時間で同じ距離感を感じることが出来る人間はきっと限られているのだということが分かりました。

「あなたはあなたでいいんだよ、言葉遣いが重要なんじゃない。あなたの人柄がちゃんと分かる人なら、方言なんか問題にならない。あなたの本当の気持ちがちゃんと分かる相手じゃなきゃ必要ない。」

そう言ってもらえた時、色々な思いがこみ上げてきて、ついその友人の前で泣いてしまいました。
本当は遠距離恋愛が辛かったこと、自分の言葉で言いたいことが伝えられなくてもどかしかったこと、向こうからも会いに来てほしかったこと、実はずっと不安だったことが、全部溢れ出てくるような気がしました。

その後、私の方からお別れを言いました。
彼は止めることもなく、思った以上にあっさりと納得したようでした。
本当は最後に、思いっきり地元の方言で言いたいことを言ってやろうかと思ったのですが、たぶん通じないだろうなと思って止めました。
この一年ちょっとの遠距離恋愛は、私にとってはやはり辛い思いをしたという記憶のほうが強く残っています。
自分の在り方を恥じた一年でもありました。と同時に、「私らしさ」をちゃんと分かってくれる人が居ることのありがたさ、地元に生きる私を恥じないことを、改めて考え直すきっかけにもなったような気がします。


失恋.jpg


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タグ: 感動 恋愛
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